
ルースキー・ジュルナール、2003年10月23日
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現代韓国とは、「新聞読者」の国である。一度ソウル地下鉄に乗り、乗客の多数(少なくとも、座ることができた幸運な者)が、新聞のページに没頭して時間を過ごしているのを見れば、これを確信できる。新聞売り場も、韓国では一歩毎にぶつかる。客観的な統計も、これらの主観的な印象を証明している。1999年、韓国では、1千人当たり、日刊紙454部が当たった。この指標に関して、韓国は、日本(2001年、664部)とスカンジナビア諸国(フィンランド及びスウェーデン、543部)に劣るが、欧州、アジア及び北米の他のほぼ全ての発展国を遥かに追い抜いた。比較として、2001年度の米国の類似指標は、274部、ドイツでは371部、フランスでは180部に達した。
韓国人は、安価で済むために、定期刊行物を喜んで購読している。日刊紙の年間購読料は、月給のほぼ7〜8%に達する。過去数年間、韓国世帯のほぼ3分の2が、購読で新聞を得ている。
韓国出版研究所により採用された分類に従い、国内の新聞は、5グループに分けられる。第1グループとは、「総合日刊紙」である。これらは、約1ダースを数える堂々たる全国紙である。これは、一定のエリート性を自負し、多かれ少なかれ堅実な読み物を目的とした真剣な、若干重量感のある出版物である。第2グループは、先ず第1にビジネスマンを指向し、主として(だが、それのみではない)ビジネス及び経済情報を掲載する「経済日刊紙」が構成する。第3グループは、道及び大都市で発行される「地方紙」が形成する。そのスタイルに関して、これらは、全国紙をコピーしているが、言うまでもなく、現地の題材に遥かに大きな注意を払っている。第4グループとは、「イエロー・プレス」の現地版であり、公然と娯楽性、部分的に低俗な性格を帯びるいわゆる「スポーツ日刊紙」である。多数の「スポーツ」紙は、全国紙だが、同国第2の都市、釜山でも、独自の現地「スポーツ」紙が発行されている。最後に、第5グループは、英文紙が構成する。勿論、この分類は、若干の非論理性と矛盾で批判できるが、韓国では、一般に受け入れられているため、これに従うものとする。
韓国紙のヒエラルキーの最上部に位置するのは、全国日刊紙である。その中では、「東亜日報」、「朝鮮日報」及び「中央日報」の「三大中央日刊」が首位を占める。「東亜日報」と「朝鮮日報」は、既に1920年代(「東亜日報」は1920年4月1日、「朝鮮日報」は1920年5月3日に設立された。)から、韓国新聞界において、その指導的地位を保持している。かなり後に生まれた「中央日報」は、時と共に、韓国新聞界の「三大」のもう1つの一員となり、過去数年間、そこでの指導的地位を占めた。新聞紙間の競争がいかに展開しているかについては、その発行部数が編集部により用心深く保護される商業秘密であるため、判断するのがかなり難しい。新聞の紙の需要に基づく専門家のおおよその評価によれば、1998年中盤、「三大」日刊紙の総発行部数は、ほぼ250万〜300万部に達した。
一般に言えば、韓国新聞界における「商業秘密」の概念への態度は、非常に真剣である。激しい競争の条件下において、何らかの新聞の人気について提示できる多くの情報が秘匿されている。時折着手される発行部数及び購読数に関するデータを公表しようとする試みは、韓国の新聞大財閥により悪意をもって迎えられる。例えば、1997年末、韓国広告会社協会は、韓国主要紙の発行部数及び購読数に関する評価データを掲載した定期刊行物の研究を準備した(そのような情報が広告主にとって価値あることは理解される。)。これらのデータが住民アンケートの結果、間接的方法により得られたことは興味深い。反応が直ちに引き続き、新聞社は、告訴し、「商業秘密を侵害するもの」として、準備された資料の流布に対する禁止を獲得した。
韓国新聞・雑誌ビジネスの典型的な特徴は、大出版財閥が演じる支配的な役割である。そのような各財閥は、市場の考え得る全てのセグメントをカバーする出版物を発行しようとしている。理想的に、韓国の新聞・雑誌財閥は、「主要」日刊紙(これは、その全活動の主力と考えられている。)、娯楽「スポーツ」紙、「薄い週刊誌」及び「分厚い月刊誌」、並びに一連の専門出版物を発行する。つまり、新聞・雑誌財閥「朝鮮日報」は、a)「総合」日刊紙「朝鮮日報」、b)「スポーツ」紙「スポーツ朝鮮」、c)社会・政治週刊誌「週刊朝鮮」、d)「分厚い」月刊誌「月刊朝鮮」、e)月刊誌「サン」
(「山」、韓国に数多い登山愛好家用)、f)月刊誌「ナクシ」 (「釣り」、韓国の別の大衆趣味)を発行している。見ての通り、このリストには、「女性誌」と「経済紙」を除いて、事実上、全ての主要なタイプの韓国大衆出版物が提示される。勿論、新聞・雑誌市場の事実上全てのセグメントのカバーのそのような幅広さは、大財閥だけが得ている訳ではなく、より小さな会社も、その力のある限り、同じことをしようとしている。この際、ある財閥のこの出版物は、スタイル、アプローチ、そして重要なのは、思想及び政治的立場で統合されている。
韓国政治の特性の1つは、政党機構の慢性的な不安定である。国の半世紀の歴史に渡って、一つの政党も、十年を超えて存在できなかった。多くの場合、定期選挙までに創設された政党は、次の選挙までもたない。事実上、韓国政党は、大政治家の支援グループの連合体であり、驚くべきほど簡単に合流するか又は分裂する。しかしながら、このことは、韓国に重大なイデオロギー紛争が存在しないことを意味しない。逆に、現代韓国は、政治関係において、深く分裂した社会である上に、「中立」の数は、驚くほどに少ない。同国の経済成長率が数十年間記録的水準にある条件下において、これらの相違が重大な紛争をもたらしていないことは理解されるが、かなり明白に表現されている。一方で、韓国社会では、右派が非常に強い。彼らのイデオロギーは、北朝鮮への極めて懐疑的な態度、米国との戦略的同盟の強化への期待、自由市場の支持及び大財閥の発展への期待を特徴としている。左翼は、逆に、平壌のスターリン主義者に少なくとも和解的に接し、あらゆる手段をもってアメリカ人を非難し、欧州に類似した社会的保護措置(現代韓国には、国家社会保障システムが事実上存在しない。)を国内に導入し、大財閥を根本的に再編するか、又は完全に解散しようとしている。右翼も、左翼も、明白に表現されたナショナリストであるが、様々なタイプが存在する。現在、同国の権力は、盧武鉉大統領の穏健派左翼政府に属している。
韓国の政党機構が短命である以上、韓国の政治家は、最も予期せぬ性格の日和見的妥協の傾向があり、イデオロギー上の議論において主要な役割を演じているのは、新聞と雑誌である。事態は、逆説的に(全く別の原因により)、事実上、社会に存在した思想プラットフォームが、先ず第1に、「分厚い雑誌」
の位置で独自の表現を見出したブレジネフ時代のソ連で観察できた状況を想起させる。韓国では、実際、個別の出版物ではなく、1つの財閥により発行される各種出版物群全体が、一定の立場を表現する。この際、新聞は、政治家と異なり、余計な柔軟性を特徴とせず、数十年間、独自の思想及び政治的立場への忠実さを保持している。韓国には、指導部の第一声により指示された標的を攻撃する用意がある独立のペンが存在しない。著名なジャーナリストの多数は、年月をかけて自分の名声を構築する上に、そのような名声の重要部分は、政治的見解と執着の一定かつ安定したセットである。
右翼には、「朝鮮日報」と「東亜日報」財閥(韓国の新聞・雑誌財閥は、通常、財閥を象徴するその発行する日刊紙の名称を帯びる。)が存在する。活動的で、あらゆる新潮流に
敏感な新聞たろうとしている「中央日報」は、若干中道近くに位置する。左翼において、疑う余地のないリーダーは、「ハンギョレ新聞」紙である。そのライバル紙と同様、「ハンギョレ新聞」は、日刊紙、「薄い」社会・政治週刊誌、映画ファン用雑誌及び経済誌等、普通の出版物の全セットを出版する財閥により発行されている。
現代韓国における地方出版物の役割は、かなり控えめなままである。主として「総合紙」の類似物である地方出版物は、全ての大都市で発行されているが、その読者は、余り多くない。韓国人の圧倒的多数は、中央紙を好む。この関係において、韓国は、全ての主要紙が地方発行であるアメリカよりは、日本に近い。
韓国出版機構において特別な地位を占めているのは、事実上「イエロー・プレス」の現地版である「スポーツ」紙である。これらの新聞は、比較的最近、1960年代末になって初めて現れ、1980年代になって初めて大衆的になった。軍事体制時代、検閲は、新聞の政治的内容を統制しただけではなく、その紙上に未点検の資料、ポルノ写真及び名士の私生活のデマ
、つまり、低俗な出版物に値することを許そうとはしなかった。検閲が弱化するや否や、左翼ではなく、今や金を稼げることを理解した機転の利く新聞実業家も、これを利用した。今、「スポーツ」紙には、実際に、各種スポーツの出来事
に関する情報が少なくないが、スキャンダラスな記事、映画及び舞台の「スター」の私生活に関する話、セクシーな女性の写真、軽薄なコミック及び推理小説が多い。現在、「スポーツ紙」という名前自体は、伝統に従っている公算が大きい。低俗なジャーナリズムが利用する「スポーツ」のカバーは、韓国新聞界を日本と結びつける多くの特徴の1つである。
「スポーツ」紙の発行部数が非常に著しい下で、韓国インテリ層におけるそれへの態度は、かなり軽蔑的であるか、少なくとも皮肉的である。これらの新聞は、しばしば、淫乱と暴力のプロパガンダで非難する社会組織により批判されている。経済及び政治エリートも、「スポーツ」紙を見下している。数年前に行われたジャーナリストのアンケート中において、「スポーツ」紙全職員の70%以上が自分の仕事に気が引け、変えたがっていることが明らかになったのは偶然ではない。
韓国「主要」紙の内容について言えば、そこに現れる資料の大部分は、内政、部分的に経済に充てられる。韓国紙の典型的な特徴は、彼らが外界に払う注意の小ささである(それにも拘らず、雑誌も)。韓国紙の国際部は、非常に小さい。多くの場合、国外からのニュースには、ほぼ2面(韓国の標準的な日刊紙は、通常、約30ページの大きな「プラウダ」判)が充てられる。この際、紙上に掲載される国外情報の大部分は、他国の政治生活ではなく、国際経済ニュース、その上、先ず第1に、その経済が周知の通り、輸出入に著しく依存する韓国自体の状態に影響を及ぼし得るものに関係する。逆に、韓国内政の問題、議会のあらゆる策動、政府の異動及び省庁の揉め事、政党の絶え間ない合流と分裂が、
途方もない量の詳細と共に、紙上で熱く議論されている。総じて読者の執着と関心を反映しているため、商業的視点から、韓国紙のそのような機構が、多くの点で正当化されていることを語る必要がある。
雑誌の中で最も堂々たる種類の読み物と考えられるのは、その大部分が大全国紙の編集部により出版され、その月刊版である「分厚い雑誌」と考えられる。これは、体裁に関して比較的小さいが、非常に分厚い(400〜600ページ)出版物である。ソビエト・ロシアの「分厚い雑誌」と異なり、その韓国版は、文芸作品を比較的少ししか掲載しない。韓国には文芸専門及び文芸批評月刊誌も存在しているため、この規則には例外が存在する。多くの雑誌では、文芸作品ではなく、現行政治をテーマにした各種時事評論と資料が優勢である。
しっかりした堂々たる別版の雑誌は、社会・政治週刊誌である。装丁と資料の選定に関して、これらの出版物は、韓国で良く知られているアメリカの週刊誌「Time」又は「Newsweek」(両雑誌は、文字通り、各新聞売り場に存在し、「Newsweek」は、韓国語で発行すらされている。)を公然と模倣している。韓国で最初のそのような出版物となったのは、1964年に現れた「週刊韓国」誌だった。多くの場合、社会・政治週刊誌は、全て同じ新聞財閥により出版されている。事実上、そのような週刊誌は、新聞の付録を成し、しばしば、「週刊」を付けただけで、同じ名前すら帯びている。例えば、「朝鮮日報」紙に対して、そのような並行出版物は、「週刊朝鮮」、「韓国日報」紙に対しては「週刊韓国」、「中央日報」紙に対しては「Win」(反米主義の成長にも拘らず、英語名は、今、流行である。)、「ハンギョレ新聞」に対しては「ハンギョレ21」である。全ての週刊誌が
その創設紙とほぼ同じ政治路線を堅持していることが分かるが、雑誌形態は、何らかの問題のより深い分析を与えることを可能にする。
韓国雑誌の別の目立ったグループは、通常、財閥システム外に独立的に存在する「薄い」政治及び社会・政治月刊誌が構成する。そのような独立の月刊誌の多くは、過激な政治的立場を特徴とする。つまり、「マル」(「言葉」)は、公然たる左翼民族主義、反米、時には穏健な社会主義の雑誌であり、「韓国論壇」は逆に、極めて右派かつ保守的な出版物である。勿論、これらの出版物は、政治に非常に関心を有し、自分のはっきりとした政治的信条を有する人を対象にしている。
勿論、韓国の全ての出版物がイデオロギー化されているには程遠い。韓国雑誌の潤沢さには、単に驚かされる。国内には、プラモデルの愛好家、歴史再建者、切手収集家及び古銭収集家
のための雑誌が存在し、多数の専門学術及び科学技術出版物については語るまでもない。韓国では、数十冊の女性誌、恐らく、数百冊のマンファ・コミック(日本語の「漫画」としてより有名な漢字2文字の韓国式発音)を掲載する雑誌が発行されている。しかしながら、総じて、韓国のジャーナリズムは、先ず第一に、イデオロギー的現象のままである。
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韓国のマスコミ
※逐次追加
| 会社名 | 名称 | 備考 |
| 朝鮮日報社 (保守) |
朝鮮日報 | 日刊紙 |
| 朝鮮日報(日本語版) | 日刊紙 | |
| スポーツ朝鮮 | スポーツ日刊紙 | |
| 週間朝鮮 | 週刊誌 | |
| 月間朝鮮 | 月刊誌 | |
| 東亜日報 (保守) |
東亜日報 | 日刊紙 |
| 東亜日報(日本語版) | 日刊紙 | |
| 週間東亜 | 週刊誌 | |
| 新東亜 | 月刊誌 | |
| 科学東亜 | 科学月刊誌 | |
| 女性東亜 | 女性月刊誌 | |
| 中央日報 (中道) |
中央日報 | 日刊紙 |
| Weekly | 週刊誌 | |
| 月間中央 | 月刊誌 | |
| 韓国日報 | 韓国日報 | 日刊紙 |
| 週間韓国 | 週刊誌 | |
| 京郷新聞 | 京郷新聞 | 日刊紙 |
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最終更新日:2004/03/19